超越技術管理機構/OTeCS

目次

序文

 TLOの発生する本質は、人間の飽くなき向上心と好奇心であり、これを放棄するということはヒトという種の存在自体を放棄することにほかなりません。
 そして、この本質だけがTLOを生み出すものではなく、向上心や好奇心があった上で、それを現実のものとする手段があるからこそ、TLOは世に送り出され続けるのです。
 また、TLOという存在そのものが曖昧でありつづけたこともこの事態を引き起こすことに一役買っていると言えるでしょう。

 たとえるなら、飢えた旅人がその空腹を満たすために見境なく食べ物を食べ続ければ、いつかはその身体を破裂させて死ぬか、見分けられなかった毒の食べ物にあたって死んでしまうようなものです。
 我々がするべきことは、この空腹を耐えて餓死をまつことではありません。
 数多の食べ物の中から毒の食べ物を見分ける知識を得ること。
 戸棚を作って毒と無毒とを分け、むやみに食い散らかすことのないよう鍵をかけること。
 節度ある食べ方によって棚の食べ物がなくなることを先送りし、毒に手をださないように生きることなのではないでしょうか。

 人が人らしさを失わぬまま、超越技術への欲望に身を任せぬよう生きるための機関として、ここに超越技術管理機構を設立します。

概要

 法官の協力のもと星見司処の下部組織として、アイドレス上に存在する技術を収集・管理する「超越技術管理機構(Over Technology Control System/OTeCS、オーテックス)」を設立する。
 OTeCSは超国家組織であり、帝国・共和国の垣根を越えてTLO技術の発生・濫用・拡散を抑止すると共に、TLOの明確化を行い、対策の協議を成立させると共に、事故的なTLOの発生を防止する。

目的

 上記三つの命題によって過剰な技術開発を制限・管理し、可能な限りTLO発生を防ぐことを目的とする。

職務

 超越技術管理局は目的の項に上げた三つの命題より、主として以下の職務を負う。

アイドレス全体に対する職務

 第一。TLOとはどのようなもので、拡散がどのように世界の滅びをもたらすのか、その仕組みを明らかにして全国への周知を行うこと
 これによって国民一人ひとりの危機意識を喚起し、TLOの乱開発を極限する。これはT13開始当初の危機的状況を脱するため、最優先で成されるべき職務である。
 また、危機的状況を脱した後も啓蒙活動を継続し、常に防災意識を高めていかねばならない。

 第二。今ニューワールドに存在するすべての技術を差別なく収集し、記録・管理すること
 申請や調査などによってOTeCSに技術情報を集積し、発明者や技術を利用している組織などの履歴・普及情報と技術の種別とそのレベルなどの技術情報の二つによって大別して、ライブラリにてランク別に管理する。新技術の開発や既存技術の転用が行われる際はこれをOTeCSに申請してライブラリを更新しなければならない。
 このライブラリから技術情報を引き出すことにより、旧来の技術を応用して目的を達するための方策を得る。また、ライブラリに集積された情報から、技術の拡散や高度化を常に監視し、その状態に応じてOTeCSから該当組織への警告を発信していく。

 第三。ニューワールド全体の観測による保全を図ること
 技術がTLO化する時、またTLO化した技術の産物が稼働する時、リューンの流れという形で兆候が現れる。
 これを事前に察知するため、個々の技術とその産物のリューン消費をテストし、星見の塔より定期的にリューンの流れを計測することで異常を迅速に察知する。
 また各国でこの職務を行うため、予兆検知(異常診断)システムを構築する。

 第四。技術の取り扱い資格制度を設立し、運営していくこと
 技術の危険性を知らぬものが無用心に技術に手を触れることがないよう、各技術の取り扱いに級数による資格制度を設け、運営する。
 級数の高さと取り扱える技術の高さを対応させ、各技術系統ごとに異なる資格を、また特殊な技術に対しては級数を必要条件とした特別資格を設定し、対応する。
 これによって技術を扱うに足る知識と理性を育成し、技術の濫用とTLOが拡散する事態を抑止する。

 第五。技術を法的な手段によって保護すること
 対外的な法的措置を執り行える制度を法官と連携して制定する。
 資格制度に反して技術を悪用・濫用された場合、またある技術の拡散などが深刻な状況にあり、かつ警告が聞き入れられなかった場合や、技術者が資格の範囲外の技術を取り扱ったときなどに、罰金や資格剥奪、技術の利用停止を始めとする各種罰則を法官と共同で制定し、OTeCS運営によるTLO抑止力を実体のあるものとして実現させる。
 また、第二の職務によって集積された技術情報を、管理者たるOTeCS及びその上層組織たる星見司が盗用・悪用することのないよう、内部監査機関と、法官による法的な拘束を設ける。
 OTeCSはあくまでも技術の高度化とその拡散によって発生する諸問題を未然に防ぐことを目的とし、その方向性を見失ってはならない。

 第六。技術を技術的な方法で保護すること
 TLO化した技術及びその産物であっても、状況によってはその力を使わざるを得ない状況も発生する。TLO技術を利用したオブジェクトを限定生産する場合、ブラックボックス化した制御中枢を開発することで、OTeCS管理下のみでの生産を可能とする。
 また、そのオブジェクトを認可を得ずに分解・整備したり、制御中枢を取り外したり、制御中枢を介さずに運用した場合、またOTeCSによる定期チェックを受けなかった場合に、ブラックボックスは自壊してオブジェクトは使用不能になる。またそれを行った者・組織にはOTeCSが然るべき対処を行う。

 また技術の収集段階において、技術の公開レベルを技術所有者が決定することができるシステムを作成する。これは利用組織などのプライバシー情報から技術の詳細に至るまでの全情報に適用される。
 公開レベルを最高に設定した場合には、収集された事実自体からその管理情報の一切を一部の高位星見司のみが取り扱えるものと設定される。警告が必要であったり、それ以上に深刻な状況にある場合、必須情報のみが公開される。

第七世界人(アイドレスプレイヤー)に対する職務

 第七世界人(アイドレスプレイヤー)は、マイルやイグドラシルのアイドレス枠を使用して、「アイドレス」という形で技術を生み出している。この「アイドレス」は要点に沿う限り(時には要点もなく完全に)、無限の自由度を持つ。
 これはアイドレスというゲームの楽しみのひとつでありながら、同時に非常に危険な状態を招く要素とも成り得る。特に、藩国全体で利用するアイドレスは、その作成目的が藩国全体で共有する「一般化」であり、技術の拡散に深く関与している。
 この危険に対して、これまでは各個人が作成するアイドレスがTLOにならないよう「気をつける」という対策しかとられてこなかったのが現実であり、それによって多くの危険が発生してしまった。

 OTeCSは、作成アイドレスの設定チェックを行うことにより、「アイドレスプレイヤーの技術管理機構」としての機能を担う。
 具体的にはクオリティチェックの前の星見司によるテックレベルチェックとして、提出予定のアイドレスに危険な要素がないか判断を行う。
 このチェックは設定的には【星見司複数人が現場で直接立ち会って行い、リューンの流れや消費量を検査する】という形で行われ、各人がレポートという形で「問題ない・危険かもしれない・とても危険である」の3段階判断を提示する。
 また、このチェック結果を公示していくことでTLO判定を下されるアイドレスが世に出ることを抑止する。

 なお、テックレベルチェックは、提出したアイドレスが危険であり、クオリティチェックを受けられないようにする、という遮断機構ではない。
 まずTLOでなくするためのアドバイスを行い、その上でTLO認定が解除されれば平常通りクオリティチェックを受けることが出来る。
 また、TLOであることを認識した上で作成を希望する場合は、所属国の藩王会議による2/3以上の賛成と、所属国代表者(共和国であれば大統領、帝国であれば宰相、もしくは皇帝)との作成希望者自身の直接面談による承認を得れば、TLOと認定されたアイドレスを製作することが出来る。

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